INTERVIEW | 2019.09.18
聴いてくれる人に寄り添える音楽に
聴いてくれる人に寄り添える音楽に
日々の暮らしの中できらりと輝くお守りとなるような言葉たち。鮮やかで、強くまっすぐな歌声。今の日本のシーンでは類を見ない感覚を持ったシンガーソングライター・カネコアヤノ。今月からタワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスターにも起用され、今最も注目度の高いアーティスト。そんな彼女が、ロングセールスを続ける前作『祝祭』から約1年半ぶりとなるアルバム『燦々』を、9/18(水)にリリース。収録曲のひとつである「光の方へ」は、中川龍太郎監督映画『わたしは光をにぎっている』の主題歌として書き下ろした楽曲。アルバム制作や楽曲制作、そしてカネコアヤノの現在地について話を聞いた。
——ニューアルバム『燦々』は、前作よりもポップさが増した印象を受けましたが、制作段階ではどんなイメージだったのでしょう?
『祝祭』と違ったところはプリプロの期間を長く設けたこともあり、いい意味で丁寧に作れたかなと思っています。『祝祭』は衝動的に作った部分が大きかったので、そこは大きな違いかなと思っています。そして、改めて気づいたのは、根本的にやっていることはずっと変わっていなくて、今までも同じように音楽を作っているということです。
——アルバムに収録されている「光の方へ」という楽曲は、中川龍太郎監督の新作映画『わたしは光をにぎっている』の主題歌として書き下ろしたそうですが、どんなイメージで制作されたのですか?
映像がほとんど出来上がっていて、それを観て作りました。タイアップでの楽曲制作というのは、自分自身のアルバムを作る時の方法とは少し変わりますが、出来上がってしまえば一緒かなと思っています。「光の方へ」は、タイアップで書き下ろした曲ですが、自分の心の中では大事な曲になりました。だから終着点的には一緒なのかなと思っています。
——主題歌のオファーが来た時はどんな気持ちでしたか?
中川監督は知人の紹介で1年くらい前に飲みの席でお会いして、その時に「僕はカネコアヤノさんの歌が好きで、次の映画の主題歌を書いて欲しい」と言っていただきました。純粋にうれしくてお受けしました。中川監督は、とてもおもしろく、人間的にも話していると学びがある方だから、このお話は私にとっても意味のあることだと感じました。
——主題歌を制作されることで、ご自身の制作に気づきはありましたか?
映画に主題歌を書き下ろせたこと自体が、一番の学びというか収穫なのかなと思っています。
——『燦々』というタイトル曲がありますが、それに込めた想いはありますか?
書いたままなんです。何か強い想いとか、それを楽曲に込めていますとか、説明をする気持ちで作っていないので、聴いてくださる方の解釈で自由に感じていただけたらいいなと思っています。私が説明をしてしまうと、それにしかならなくなってしまうので。楽曲に込めた想い、というよりは、好きに解釈をしていただいて聴いてくれる人に寄り添える音楽になれたらうれしいです。
——アルバムを通して聴いてみると、カネコアヤノさんの様々な“声”に触れることができました。歌い方を意識的に変えていたりするのでしょうか?
特に意識的に変えて歌うことはないですね。たのしく歌っているだけです。
——カネコアヤノさんが楽曲制作で心掛けていることはどんなことですか?
自分が普通に感じていることを楽曲にしたいですし、暮らしていく中でできる音楽が作れたらいいなと思っています。
——そういえば、カネコさんは新作の度にLPレコードも制作されていますよね。このレコードもかなり人気だそうですが、そもそもレコードを作ろうと思われたのはどうしてですか?
私自身が好きだからというのと、大きいのがカッコイイ。あとは、手に取るうれしさを感じてもらえたらいいなと思って作っています。世代的にはレコード世代ではありませんが、私は手に取れる環境にあったし、レコード屋さんも近くにありました。私がリリースしているのはレコード、CD、配信とありますが、CDとレコードでは全然音が違います。それに買わないとあの大きさは手に入れられない。手に取った時の喜びみたいなものが詰まっているなと思います。針をおとす行為や、A面B面の喜びを知ってもらいたいです。
——カネコアヤノさんの歌詞が大好きで、特に言葉選びに潔さを感じるのですが、どんなことを意識して書かれているんですか?
共感を求めて歌詞を書くことはあまりなくて、求めてくれている人に響いてくれたらいいかなと思っています。だから意識的に、戦略的にやっていることはなくて、歌詞は読み物として詩として完結しているといいと思っています。
——今回のアルバムは前作の「祝祭」よりも進化したような、音の数が増えたような印象もありました。
そういうことで言うと、制作に関わってくれたみんなが、前よりもうまく足し算もできるようになったし、引き算もできるようになったような気がします。
——アルバムのジャケットがすごく印象的です。“ひので”という名前のカネコさんが飼っている猫なんですよね?“ひので”をジャケ写にしようと思われたきっかけは?
写真家の木村和平さんにアー写やジャケ写など、アートワークは撮っていただいているんですけど、家の中で撮影することも多いので、ひのでの写真を和平くんが撮ってくれていたんです。その中で偶然この写真が撮れて、それを見せてくれた時に“この写真をアルバムのジャケットにしたい!”と思ったんです。とてもかっこよくて、いい写真だなといつ見ても思います。
——今回、タワーレコードのポスターに出演されていますが、どんどんカネコアヤノというアーティストが世に知れ渡っていっている感じを受けています。ご自身ではどのように感じられていますか?
全然自分ではいまだに、なんで私なのかな?という言い方は変ですが(笑)、不思議な気持ちです。実感もなにもないです。タワーレコードにはお客さんとしてよく行っていましたが、当時はそこに私のCDが置かれていることも自分が「NO MUSIC, NO LIFE.」になることも、考えもしなかったので……なんかウケるなと思っています(笑)。
——実際にタワーレコードにポスターが貼られているのをご覧になっていかがですか?
でかー!って感じです(笑)。本当にお話をいただいてうれしかったです。いつもNO MUSIC, NO LIFE.の写真はカッコいいなと思って見ていたので。
——ちなみに、今、カネコアヤノさんの中で流行っていることは?
……あまり自分の中に流行りはないんですけど……。あ、たまごっち。今流行ってます。
——え?いつからですか?(笑)
おとといから(笑)。
——ますますカネコアヤノさんの魅力にハマってしまいそうです(笑)。福岡でのライブが楽しみになりました。
★2020年2月9日(日)「カネコアヤノ TOUR 2020 “燦々”」福岡公演開催決定!★
チケット先行・公演詳細はこちらから
http://54.64.231.161/shows/1199
Interview & Text & Photo by Aya Tsutsui
Release Info
カネコアヤノ New Album 9/18(水)リリース!
http://54.64.231.161/recommend/1178/