LIVE REPORT | 2019.12.04

浅井健一& THE INTERCHANGE KILLS

「BLOOD SHIFT TOUR 2019」11/7(木)門司BRICK HALLライブレポート

浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLSの『BLOOD SHIFT TOUR 2019』九州シリーズの最後の夜は
11月7日(木)門司ブリックホール。

浅井健一の音が映画のセットのような空間で聴けるとは、なんて贅沢なシチュエーション。自分もこの瞬間の一部になるんだ。部屋でCDを聴いている時はそのアーティストは自分だけのものだけど、ライブに行くと同じ空間で息をしているのにいつもよりなんとなく遠く感じ寂しくなる。そんな経験あるはず。

今回はそれと逆で、開演前に漂う空気から、浅井健一と心が触れる…そんなゾワっとした期待が湧いた。浅井健一の“絶好のタイミング”そんな感じだ。

2016年に結成したBa中尾憲太郎、Dr小林瞳との「浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS」。ファンにとっては親しみのある顔ぶれのバンドを引き連れてのツアーではあるけど、今回は5年ぶりのソロ名義のアルバム。これに意味がないわけがない。ベンジーこと浅井健一と言えばアーティストが憧れるアーティストの称号を持つ選ばれし者というイメージで…というか恥ずかしながら80年代生まれの私は、大人が聴くBLANKEY JET CITYと言うお洒落なバンドの真ん中の人で、椎名林檎の歌に出てくるベンジーさんて人、くらいの情報しか元々持ち合わせてない、ごめんなさい。

今回のツアーにあたって、初めて浅井健一の音にちゃんと触れた不届き者。九州シリーズのスタートを切った11月3日(日)福岡DRUM-Be1でのライブで、大変失礼ながらアルバムの予習もなしに浅井健一初体験だった。シビれた。まあまあの大人になってこんな感覚って…なんだ?!先入観が真っ向から覆される快感。聴き尽くされた知り尽くされたと思っていたメジャーな人ベンジーは、実は人生で全く見たことのない新しい世界を見せてくれる人だった。

一目惚れから一気に浅井健一ワールドに誘われ…厚みが、質が違う!凄い、かっこよすぎる。今まで知らずに申し訳ございません!そんな体験をしたのがつい数日前で、迎えたツアー九州シリーズ最終日・門司ブリックホール。

きっと今日来るファンはずっと前からこの浅井健一ワールドの魅力を知って生きてきたんだな…と尊敬の念すら抱きながら、煉瓦造りの趣のある会場にスタンディングで徐々に人が埋まっていく光景を見ていた。

会場は、後ろのカウンターまでビッシリ。オンタイムで出てきてくれるのか?遅れるのか?そんな些細なことすら浅井健一を演出する一コマに思えるほどに、起こる全てを自分を彩る材料にしてしまうんだな、この方は。

開演時間をほんの少し過ぎたころ、3人がステージにおもむろに入ってきた。圧倒的な存在感の浅井健一に長身イケメンのBa中尾憲太郎、黒髪ロング美人のDr小林瞳、ひとまずバンドとしての景色の良さに見惚れる。客席に手を振ったりしないクールな佇まいも期待通り。こなれた感はあれど現実味は出して欲しくない。映画の登場人物のような3ピースバンド。素敵だ。

フェイドアウトする会場SEに噛みつくようにベンジーのギターが唸る。高い天井に一瞬で音が回り、すかさず入るリズム隊にガシッと鼓動を持っていかれる。スタートからの疾走感は、一度乗ってしまった列車から飛び降りる方が難しいのと同様、お客さんはもちろんリードする浅井健一ですら制御できない不可抗力がステージを操っている…そんな不思議な感覚を覚えた。

浅井健一の若かりし頃から変わらぬルックスと一貫した音楽性からなのか、それとも曲からやばい周波数でも出してるんだろうか、時間の経過を忘れて音に溺れる。アルバム4曲目に収められている『Sunny Precious』など、イントロからキャッチーなのに全くありきたりじゃないギターフレーズとDr小林瞳の美しいコーラスが脳をフワフワとかき回してくる。恥ずかしいほど気取らない歌詞の世界観が、遠い夢を見てるようだけど自分ごとに感じられる心地よさ。一瞬どこにいたのかを忘れて音に没頭してしまう。

今回ちゃんと音に触れるまでは浅井健一と言えば少し高めのキーのボーカルが特徴的。もちろんピュアで尖ってて少し甘いその声に心奪われはするんだけども、ライブではボーカルはあくまで表現したい世界の一構成要因に感じられた。なので私が知っていたメジャーの浅井健一とはまるで別物。この最高の裏切られ感が伝わってくれればうれしい。

ライブを構成する一つ一つ、メロディや歌詞、ビートやリズム、コーラス、音響、照明、お客さんのファッションにいたるまで、全てが浅井健一のアーティストとしてのあり方が作り上げてきたものに見えてくる。

ライブ中盤、メンバーソロパートからのセッションは、身体が無造作に揺さぶられ思考のあっち側にトリップしてヒヤッとさせられる一瞬があった。ステージ上でこんなに遊べるなんてどうなってるんだこのバンドはと。Ba中尾憲太郎の荒れ狂うブリブリのベース、Dr小林瞳の髪振り乱すけど無表情のドシっと安定したドラム、リズム隊の暴れながらも自由な浅井健一ワールドを大切に守ろうとするプレイにバンド間のリスペクトがにじみ出ていた。さらにバンドとしてのキャリアと魅力を感じたのは、癖がないのにエッジがきいてて澄み切った空気感を演出する3人のコーラスワーク。なんと稀有なバランスのおしゃれなバンドだろう。

ふと音が止まり目が覚めた。圧倒されつつも心が引き離されずに一体感を感じるのは、等身大の部分をMCなどで垣間見せてくれたりするからだ。
浅井「『目を閉じる映画』って曲あるんだけど、意味わかる?わかるよね?」
客席「教えて〜」
浅井「思い出とか、目を閉じて映画みたいに思い出すってことなんだけど…」
客席「だよねー!」
会場は爆笑!

アーティストでありながら、みんなの代弁者としての姿勢を楽曲の中でも、ライブでも持ち続けてる。特別にならない特別感。それって大人になる程ほんと難しいのに、浅井健一はいとも簡単にやってのける。というかずっとそうなんだろう。今回のアルバム「BLOOD SHIFT」も、実際に会った浅井健一の空気感そのままだ。詩的でロマンティック、メロディアスだけど攻撃的。アンバランスな妙和が、とても立体感があって音楽だけに表現の場を留めてない浅井健一のアーティストとしての器の大きさを感じた。アルバムの中でも個人的にビビっときたのは「HARUKAZE」の歌詞で、社会との違和感や世界にへの純粋な希望を、年齢を重ねた浅井健一が歌うとより一層はかなく刹那に感じて胸がキューン。男性ファンとは見方がちょっと違うかもしれませんが、浅井健一の少年を垣間見せるところはかなり母性が刺激されるのだ(笑)

ライブ終盤には誰もが知るブランキーのヒット曲『赤いタンバリン』を全力でやってくれる。憎いな。変わらない彼らしさを長年維持するために進化続けてきたんだろうな〜、ということがさらりと着こなす花柄のシャツの胸元から覗く胸筋が物語っていた。凄い身体作りをしているのだろう。惚れる。このライブに足を運んだお客さんは浅井健一の“絶好のタイミング”に立ち会えた、そう実感したはず!少なくとも私はそう。率直に魅了されてしまったから仕方がない。

浅井健一の音楽やアルバムの楽曲を細かく分析する余裕はない、知識もない。だけど理由はともあれ好きになってしまったのだから。アーティストに恋をするとはこういうことなんだ、と。有名だから、ファンが多いから、売れたから、親しみがあるから、そんなシード権を使わずに未だに音楽で正面から恋させてくれる。誘ってくれる。この経験を是非ファンのみならず、たくさんの人にライブで肌で感じで欲しいと思う。浅井健一の世界観に触れたくて、家に帰って即座に彼の著書を買い求める私はもう終わりのないベンジーホリックだ。

<TEXT;SAYAKA.H>

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Shows Info

浅井健一& THE INTERCHANGE KILLS

SEXY STONES RECORDS 20th ANNIVERSARY『KILLS MORE 』

 

詳細はこちらから

https://land-f.jp/artist/asaikenichi-tik/

Profile

浅井健一& THE INTERCHANGE KILLS

https://www.sexystones.com/