LIVE REPORT | 2021.03.10

山中さわお

『NONOCULAR VIOLET TOUR』DRUM LOGOS(福岡)2月7日(日)ライブレポート

▼メンバー▼
Vo/Gt:山中さわお・Gt:木村祐介(ArtTheaterGuild)・Ba:関根史織(Base Ball Bear/stico)・Dr:楠部真也(Radio Caroline/Casablanca)

昨年6月に福岡で開催予定だった『ELPIS TOUR』が中止となり首を長くして待ち続けたファンに迎えられ、
ライヴは最新(6th)アルバム/ツアー・タイトル曲の「Nonocular violet」で幕開け。

ブルーライトに照らされた山中が爪弾くギター・アルペイジオで曲がスタート。
やがてピンスポットに照明が変わり、バンド・サウンドが会場を包み込んだ瞬間、鳥肌が立ちました。

今や、その機会が稀有なものとなってしまった「ライヴを見る」という体験。

山中とオーディエンスは、お互いに”一音一音、一言一言”かみしめながら、
「同じ時間と空間」を共有出来ている喜びをゆっくり、じっくりと確かめ合っているようでした。

楠部の「1,2,3,4!」というカウントでCDと同じ曲順の「POP UP RUNAWAYS」へ。

軽快なロック・ビートを増長する関根のグルーヴ感溢れるベース・ラインが最高!!
オーディエンスも体を揺らしながらバンドの演奏に応えます。

勢いそのままに「The Devil’s Pub」。

お客さんは、もうすっかりこのライブの雰囲気に身をゆだねているよう。

曲終わりで山中がひときわ大きな声で「HE~Y!!」と発すると、お客さんも美しい拍手の音で応えます。

ここで最初のMC。

「とっても久しぶりじゃないか!~オレは今日もイチゴ食べて元気だよ!」

ソフト生地の上下の衣装を「パジャマじゃないぞ!」と
自分をいじって笑いを誘いながら「集まってくれてありがとう!!」と感謝の言葉が。

続いて曲は「RED BAT」「オルタナティブ・ロマンチスト」「Old fogy」。

関根と楠崎によるコーラス、そして木村も山中との絶妙なギター・コンビネーションで
バンド・サウンドに彩を加えて行きます。

7曲目「ノスタルジア」。

これまでの3曲から雰囲気が変わり、よりいっそう山中の歌詞が心に響いてくるナンバー。

~優しい気持ちはきっと/探せばさわれるんだよね~という一節を目の前で歌われると
CDの何倍もの感動が押し寄せてきます。

続くMCではチケット代(¥8,800/プレゼント付)やパジャマ?のことを面白可笑しく話題にしながら、
「どうしても音楽が必要なんだ!~中略~ ロックンロール、楽しもう!!」とエンジンをかけます。

「Slide in tomorrow!」「アトラクションガール」「Permanent black sheep」と続く3曲で、
今この瞬間 ”リアル・ロック・ライブ”が目前で繰り広げられているダイナミズムに心揺さぶられます。

少しの静寂のあと、
~一瞬なんだろう~と山中が弾き語りで歌い出すバラード「All memories」。

3rdアルバムの楽曲ながら、~今はもう誰も聴かない/メロディ達が彷徨う暗闇で/僕は眠りたいんだ~
という歌詞が彼の「普遍的な音楽観」を象徴する言葉にも聴こえて、じんわりと胸の奥からこみ上げてくるものが。。。

実に感動的な1曲!!


余韻を残しながら、ここで高ぶった感情をクールダウンしてくれるMC。

コロナ禍で世の中の状況が一変したことを憂いながらも、自分は変わらずに新曲をたくさん作り続けて。。
その中で「みんなと気持ちが共有できると思っている」と紹介された最新アルバムからの「サナトリウムの長い午後」。

そこから「HEAVEN’S PINHOLE」「Answer」と続く3曲で、オーディエンスの感情を全て受け止めながら唄い続ける山中の姿と、
彼をしっかりと支える鉄壁のバンド・アンサンブルが会場を包み込んでいました。

その有様が、目に見え、手に取れるように感じた時、このLIVEの「確信(核心)」を見たような気がしました。

ここでメンバー紹介へ。

Ba:関根史織
ファンの方からの差し入れが、子供の頃の想い出がある「びわゼリー」だったことに感動した!
という素敵なお話しが。

Dr:楠部真也
山中さわおバンドのツイッター写真(トリックアート)の話題に触れて、「8年前からずっと道中の写真をさわおさんが撮りたがる」
云々。。と話をしている途中で山中に話をさえぎられるというオチが。最後に一言「あのトリックアートは僕が見つけたんです!」
ということを皆さんに言いたかった、と。

Gt:木村祐介
「去年、さわおさんに一番お酒をおごっていただいたのは僕なんじゃないかな」という話題から、
いつも山中との待ち合わせには少し早く店の前に行って、ピロウズを聴いて待っているそうで。
「それで、さわおさんがやってくると”本人登場だ!”」とテンションが上がる、という微笑ましいエピソードを。

雰囲気が和んだ後、ライブは終盤へ。

”音楽業界に爆弾を落とす”と一言添えられて「ロックンロールはいらない」。

ステージ全体が真っ赤なライトに照らされて、そこに映える4人の姿が文字通り「ロック」してました!!

楠部のファスト・テンポなドラム・ロールから、続いては「ヒルビリーはかく語りき」。

木村のギター・ソロがクレイジーに曲を暴走させ、関根もフレットを縦横無尽に操り軽やかに飛び跳ねながら
ベースで呼応する。

行きつく間もなく再び楠部のドラムに導かれて「パン・パン・パン」と3拍子のリズムに手拍子が重なり、
曲は「Mallory」へ!!

容赦なく繰り出されるR&Rナンバーの連続に、オーディエンスも全身で”ロック”しながらバンドの熱演に応えます。

沸点に達したフロア熱を更にもうワンステージ、UPさせる「アインザッツ」。

~俺は死ぬ日まで/他の生き方は知らない/God bless me~というメッセージが、
バンドが放つもの凄いサウンド・オーラとともに胸にズシリと響き渡ります。

長い拍手が止んだ後、山中の弾き語りで静かに始まった「ケモノミチ」。

ライブ終盤の熱をゆるやかにクールダウンさせながら、歌詞のひとつひとつが
じんわりと染み入ってくる本編ラストに相応しいロッカバラード。

~Ah・・・!いつの日か/もう一度/もう一度/ニンゲンを信じたいんだ~

全身全霊、魂を込めて唄う山中の姿が白光のバックライトの中で神々しく映っていました。

満場一致のカタルシスが会場全体に満ち溢れて本編が終了。

「サンキュー!どうもありがとう!!」

メンバーがステージを去り、会場SEが流れ出した瞬間から手拍子が鳴り始め、アンコールへ。


~今日、来てよかっただろう!? アンコール、サンキュー!~

ここでは「All we need is rock and roll」「Buzzy Roars」と英語詞ナンバーが続き、
70年代パンク・バンドさながらのワイルド&タイトなアンサンブルが炸裂!!

爽快に2曲の演奏を終えた後、山中ひとりがステージに残ってのMCへ。

「会いに来てくれてうれしいよ、ありがとう。感謝してます!」

「オレは他の生き方は知らないので、やりたくないことは絶対にやりたくないんで。

そして、やりたいことは必ずやり続ける。それを見届けて欲しい。今日は、ありがとう!」

というメッセージを残して山中がステージを去る。

やがて会場SEが流れ出すも、曲に合わせてオーディエンスの手拍子が鳴り止むことは無く、再びメンバー全員が登場。

ステージ中央での乾杯!のあと、リラックスした雰囲気の中でトーク・タイムへ。

山中がピロウズのメンバーをいじる話をしたり、関根がドジな話をしたりとアットホームな雰囲気に満ちたライブMCならではの
幸せな時間が過ぎて行きます。

2ndアンコールの1曲目は「DAWN SPEECH」。

~Na Na Na Na Na-Na Na~♪のサビでお客さん全員の手が上がり、フロアはハッピー・ムード一色に。

曲が終わりメンバーがステージから去ると、更にその手が高く上がっての拍手が鳴り止まず。
その拍手は再びアンコールを求める手拍子へと変わりました。

最後は、山中が一人で登場。

「1曲ぐらいピロウズの歌、聴きたいかな、と思って」とエレキ・ギター1本で歌いは始めたのは「Last Holiday」!!

2008年のアルバム『PIED PIPER』収録の名曲。

うれしいサプライズにお客さんは直立不動で山中の姿を見入り、耳をそばだてながら今この瞬間の全てを
記憶に焼き付けているようでした。

「ライヴ」には「そこに居ること」でしか得られない感動があり、その感動は「二度と再現されることは無い」ということ。

そこに立つアーティスト(送り手)と、それを見届ける人(聴き手)たち。

お互いが音楽を通じて「同じ時間と空間を共有すること」が何物にもかえがたい「ライヴの素晴らしさ」であることを
改めて思い起こさせてくれた一夜でした。

歌い終えた山中が言葉少なに「サンキュー、フクオカ」とだけ口にしてステージを後にする姿を見送りながら、
会場にいる全ての人たちと同じ幸せを感じている自分にも感動して、嬉し泣きしてました。

[Information]
http://yamanakasawao.com/

《TEXT:松田康宏 写真提供:BAD MUSIC GROUP》
※許可のない転載は不可

Profile

山中さわお

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