LIVE REPORT | 2020.02.22
『カネコアヤノ TOUR 2020 “燦々”』<バンド・福岡編>BEAT STATION 2月9日(日)ライブレポート
『カネコアヤノ TOUR 2020 “燦々”』<バンド・福岡編>BEAT STATION 2月9日(日)ライブレポート
写真から覗かせる笑顔からは想像もつかない歌声と日常に寄り添うような詞世界で、同世代からはもちろんプロの大人たちですら、聴き逃せない楽曲を作りあげるカネコアヤノ。アーティストとしての存在を確固たるものとしたアルバム『祝祭』から約1年、昨年9月にニューアルバム『燦々』をリリース。今回のツアーは、このアルバムを引っ提げて今年1月10日東京からスタートし、全10カ所におよぶ全国ツアー。《弾き語り編》と《バンド編》の2パターンのパフォーマンスを行うこのツアーの7公演目となる福岡公演をBEAT STATIONにて開催。今回は《バンド編》として林宏敏(ex. 踊ってばかりの国)、本村拓磨(Gateballers)、Bob(HAPPY)が参加。
会場は“超”がつくほど満員。福岡で毎年9月に行われる野外ライブ「Sunset Live 2019」にて彼女の存在を知った観客も多いだろう。もちろん彼女のライブに初めて足を運ぶというファンも多かったはず。どんなライブだろう?そんなソワソワした気持ちが伝わってくる。
ステージにバンドメンバーに続いてカネコアヤノが登場。構えることもなく、フラットに登場し、ニューアルバムからの楽曲でライブがスタート。やわらかなギター音とともに響く伸びやかなカネコアヤノサウンドが心地良い。アルバムの中でも印象に残っているポップなのにどこかシニカルさも漂う「かみつきたい」は、CDで聴いたそれとは違う表情をみせている。カネコアヤノの歌声で聴いていて心がくすぐられるのは、地声から裏声に変わっていく“流れ”を感じた時だ。それを目の前で聴くことができる幸せを、ライブスタートから早々に感じさせられる。
カネコアヤノというアーティストの歌声をCDの音源でしか聴いたことがないというファンには、この《バンド編》で新しい音楽に出会えたに違いない。バンドサウンドとカネコアヤノの相性のよさを感じられずにはいられない。
「布と皮膚」では、力強い歌声とバンド演奏が絡み合い、体験したことのない楽曲世界が奥深くへと広がっていくようだ。あの華奢な身体のどこに、そんなパワーが潜んでいたのかと思ってしまうほどだ。
中盤、「車窓より」「明け方」、そして個人的にはどうしてもライブで聴きたかった中川龍太郎監督映画『わたしは光をにぎっている』の主題歌として書き下ろした「光の方へ」。彼女の歌声を聴いていると本当に光の射す方へと誘ってくれるような感覚になる。
次から次に演奏されるライブに、観客も音楽に身体を委ねて思い思いに揺らしたり、時にはお気に入りの楽曲にテンションを上げてハンドクラップしたり、自由に音楽を楽しんでいる。超満員の会場だけになかなか動きづらそうでもあったが、それでもなお音楽に浸っている姿が、カネコアヤノにもバンドメンバーにも伝わっているのだろう。会場全体で音楽を体感しているようだった。『燦々』からの楽曲の他にも、前作、前々作も加わって、新しい『燦々』ライブという作品ができているのを感じる。
後半は立て続けにニューアルバムからの楽曲を演奏して、タイトル曲でもある「燦々」で本編は幕を下ろした。MCなしのノンストップで走りきった。
終わってみて感じるのは、ロードムービーを観た後のような、彼女といっしょに音楽の旅をしたような気持ちになった。それがカネコアヤノというアーティストが持っている音楽の世界なのだ。
これから、日本の音楽界に新しい光を、燦々と照らしてくれる存在になる予感でいっぱいのライブだった。
撮影:田中紀彦
TEXT:AyaTsutsui
※転載不可